殷鑑遠からず

tomockyです。

拡大主義のみに基づく買収は必ず失敗します。
ライブドアがフジテレビを破壊してまで、ニッポン放送を得る目的は何でしょうか。
私には見えません。
祭り気分に酔いしれている愚民どもは、大災害を目の当たりにしながらもはしゃぎ続けています。
異様な風景です。
よく、外人が日本人は変だと腐すことがあるのですが、政治家や権力者ではなく、汎国民的反権力指向(嗜好)に対する異様さを表したものだと思うのですが。
権力に対する異様なまでの敵意は諸外国の人から見れば異様なものです。
確かに、外国でも反権力的な世論が支配することはあるでしょう。
しかし、それにはそれなりの確固たる理由があります。
日本の場合、そうした確固たる理由もなしに、権力を叩きつぶすこと自体が正義だと信じて疑わない人が多すぎます。

そういえば、社長日記の3月3日の記事において「権力なんて面倒くさいもの必要ないですよ」と言っていますが、大手私鉄京成電鉄と同規模の資本金(約240億円)*1を有する大企業の社長である時点で、一種の権力者です。
下々の範となる行動を示して貰いたいものです。

毒出しはここまでとして、ニッポン放送買収騒動の陰に隠れてしまっているのですが、ニッポン放送買収着手頃の時期に、ライブドアは出版業の幻冬舎を買収しています。(過去の記事参照)

ニッポン放送買収とは対照的に、幻冬舎買収はスムーズでした。
理由は単純で、幻冬舎買収における目的がはっきりしていたからです。

ライブドア幻冬舎を買収したのは、ライブドアのblogで面白いものがあったら、それを本にして出版するというサービスを行いたいなど明確な企業戦略があるからです。

これには3つの「win」があります。
1つは、一般の利用者にとって、livedoor blogを利用することで作家デビューの可能性が開けるという「win」。
もう1つは、ライブドアにとって、そうした付加価値の高いサービスの提供によって、他社との差別化が図れるという「win」。
残る1つは、幻冬舎にとって、bloggerの本が売れれば、儲けることが出来るという「win」。

利用者・ライブドア幻冬舎の3者に三者三様の「win」が齎され、ビジネスモデルとしても(無茶をやりがちなホリエモンにしては)しっかりと成立しうるものです。
だからこそ、幻冬舎は喜んでライブドアの買収に応じたのです。

買収の目的がはっきりとしていて、なおかつ、買収される相手にも明確なメリットが見られれば、相手が何者であろうと応えてくれるものです。

殷鑑遠からず。
幻冬舎買収の成功から学んで、ニッポン放送買収の是非を考えて下さい。
意地張って権力に挑んでも、待ち受けるものは関係者全ての「lose」―敗北だけですから。

*1:ライブドアの資本金は23,967百万円(2004年10月現在)京成電鉄の資本金は24,287百万円(2004年3月現在)
   何故か、両社とも百万円単位での表示になっています。