「幸福の科学」は一枚岩ではない?

1.始めに

いよいよ総選挙の告示日が近づいたが、ここにきて宗教法人「幸福の科学」の政党組織幸福実現党でまたまた騒動が起こった。
結党以来、政策こそ全くブレがないものの、政局(というより党の人事・選挙戦略)面でまたブレが生じている。
「責任政党」を称するのに、党内(或いは教団内)で意見が割れているのは如何なものか。

2.撤退?継続?結局…

(1)経緯

8月12日頃、幸福実現党は警察当局から、公選法違反について注意を受けた。
今回の総選挙は幸福実現党の出馬の有無に拘わらず、「政権交代」がキーワードとなる総選挙で大いに盛り上がる要素は多分にあり、例年に比べて公選法違反の注意の件数が著しく増えたが、その殆どが幸福実現党によるものであるといわれている。
ただし、その内容面は事前運動や戸別訪問等の軽微なもので、買収のような類のものではない。
余りに突然の警察の訪問があったらしく、幸福実現党(或いは「幸福の科学」)のスタッフはパニックになったらしく、一部の候補者・後援者に対し、総選挙撤退の情報が流れた。
しかし、8月13日の記者会見で、饗庭直道*1が記者会見を行い、最終結論として、戦線縮小を打ち出してきた(参照:msn産経)。

(2)撤退の理由

この撤退を主張していた理由として、「同じ保守勢力の分裂を避けるには撤退すべき」という意見が党内にあったことが挙げられており、要は、幸福実現党の出馬した東京都議会議員選挙(参照)や仙台市長選の結果や世間の動向を見て、余りに民主党の勢いが強いから、今まで通り自民党をサポートする方向に持って行こうということである。
ただ、立候補者が既に活動を開始していて、その立候補者の中には教団の職員ではなく、自分の今の仕事を捨てて*2、立候補した者もいるので、全面撤退すると、そうした人たちから不満が噴出する恐れがある。
よって、全面撤退ではなく、戦線縮小という形を取ったと考えられる。

(3)教祖夫婦の動き

この戦線縮小に併せ、「幸福の科学」及び幸福実現党大川隆法総裁は党の総裁に留任しつつも、東京比例ブロックからの出馬を中止し、以前党首だった大川きょう子女史は東北比例ブロックからの出馬のみならず、党の役職からも降りた。
私は以前、宗教団体の教祖及び高僧の選挙出馬に関して、このような批判を行ったが、これが受け入れられたのかと訝るような結果になった。
なお、幸福実現党としては、「大川隆法総裁は今後も党総裁を務めて参りますが、今回の不出馬については、これから始まる他党との選挙協力を考えると、総裁は大所高所から党を指導するほうがよいこと、また、他党の候補者の中には幸福の科学の信者もおり、総裁自身が勝ち負けの世界に入っていくことには問題があることなどから、不出馬の判断となりました。」としている。
ならば、始めから大川夫妻を出馬させるべきではないと思うのだが…。

3.所感

(1)政治と宗教の関わりについて

幸福の科学」の政治へのコミットメントに関しては、私として、「『幸福の科学』は政党を作るべきではない。政策立案シンクタンクを目指すべき。」や「禁じ手を打ってきた『幸福の科学』」といった意見を述べているので、参照していただきたい。

(2)一枚岩でないことは良いことなのかもしれない?

結党以来、あれこれドタバタが続いていて、政局運営(それ以前に政党運営)が右往左往しているイメージがあり、宗教政党にも関わらず党内の意思統一がここまで拙いとは呆れる。
しかし、その一方で、「幸福の科学」という宗教組織は比較的自由に組織運営に関して意見できる風通しの良い宗教組織ではないのかと思われる
一般的に、このような宗教組織は教祖が絶対君主の如く君臨し、それ以外の構成員はひたすら唯々諾々と従うだけというのが宗教組織のイメージ故に、宗教政党は一枚岩になりがちと考えられるからである。
尤も、それでも教祖批判は許されないだろうけど*3

4.余談

今日現在、既に一部選挙区からの候補者の差し替え及び撤退が行われているが、幸福実現党によると、告示日直前の8月17日に最終結論が出るので、その詳細内容については、その後にしたい。
なお、撤退の規模は小選挙区で30〜40名程度と見られていて、比例区からの撤退は大川夫妻を除き、行われない模様である。

*1:当時、広報本部長

*2:市議出身の4名など

*3:そうなれば、脱退するのが筋だろう。