今更ながら都議選総括

1.始めに

7月12日に投開票のあった都議会議員選挙ですが、当日の夜は開票速報(NHKMXTV)に釘付けでした。
結果が私の予想と食い違っていたことなどから、心の整理が付かず、興奮から冷めて冷静になった今の今までに伸びてしまった。
ただ、全般的な傾向性としては大方の予想通り、民主党が第1党に躍り出た。
東京は小泉改革以降、比較的自民党が強いと言われているが、この都議選の結果を見ると、結局「風任せ」であると言える。

2.各政党毎の総括

(1)自民党

島部を除く1人区では悉く議席を失っている。
特に、千代田区では長きに亘って都議会議員を務めた、自民党内田茂氏が民主党新人の栗下善行氏に僅か176票の差で破られている
前回は民主党に2倍近い差で勝っていたのとは対照的である。
千代田区での民主党の勝利は想定の範囲外で私も驚いている。
また、TBSの「MR.BRAIN」というドラマで「松下百合子*1」という都議会議員が殺害されるというシーンにクレームを付けた民主党の松下玲子女史*2も当選している。
このドラマに対するクレームで得票を下げ、自民党の小美濃安弘氏が当選するとも思えたが、やはり、自民党への逆風は強く、落選している。
また、青梅市では、自民党現職の野村有信氏が民主党新人の山下容子女史に1207票差で破られた。
因みに、青梅市で前回民主党から出馬したのは、あの幸福実現党に移籍した小鮒将人氏である。
このように、1人区での落選が続き、複数人区でも世田谷区などで落選者が相次いだ結果、自民党議席を大きく減らした。
しかし、投票率が前回より高かったことから、得票数としては前回を上回っている。
また、前述の千代田区青梅市のように、民主党に惜敗した形となっている選挙区もあり、民主党に風が吹いているとはいえ、自民党勢力も隠然と力を持っていると言える。

(2)民主党

今回大躍進を果たしたのが民主党である。
落選したのは、目黒区の富川知子女史、大田区の名取憲彦氏と岡崎幸夫氏、島部の田中英二氏のみである。
富川知子女史は公示ギリギリで立候補し、選挙事務所を伊藤悠氏と共用するような形で選挙に臨んだが、如何せん準備が整っておらず、まともに選挙活動が出来なかったのが痛い。
仮に、もう少し早い時期に出馬が決定し、用意周到に選挙戦が展開できたのなら、伊藤悠氏と票を分け合う形で民主党のワンツーフィニッシュも夢ではなかっただろう。
何故なら、今回の都議選での目黒区での民主党の得票数は53488票*3で、丁度半分ずつで26744票となり、これは自民党(鈴木隆道氏)の得票数24377票よりも多いからである。
葛飾区でも同じような状況で佐藤由美女史が当選したことを考え合わせると悔しさも一塩である。
大田区に関しては新人の田中健氏と柳ヶ瀬裕文氏が当選し、現職の2人が落選したという形なので、世代交代という感じであろうか。
東京の城南エリアは民主党が比較的強いと思われたが、大田区だけはどうも例外のようだ。
島部に関しては、自民党の川島忠一氏の実績の方が買われたという雰囲気であるが、島別の得票を見ると、小笠原島だけ、自民党民主党の得票数が拮抗している。

(3)公明党

公明党は目標としていた23人全員当選を果たし、相変わらずの選挙上手振りを見せつけているが、実は得票数としては前回より減っている
全員当選は例によって、創価学会員による、ご近所・同級生ローラー作戦による所謂「F票」獲得が功を奏したものだろう。
投票率が上がると困るのは公明党とはよく言ったもので、今回の選挙での得票数は前回を下回っている*4
一部選挙区では現職を引退させ、新人を立てたりしたのだが、公明党の場合、最大の支持母体である創価学会の意向が全てなので、人の入れ替えが得票数に影響を与えると言うことは基本的にはない。
したがって、前回に比べて得票数を減らしたのは、投票率が上がった影響だと言える。

(4)共産党

共産党は13議席から8議席に減らし、自民党に次いで負け戦が続いた。
しかし、前述の公明党とは対照的に、得票数はむしろ増えているのである
共産党公明党も固い組織票を持っている組織票頼みの政党であることには変わりないが、投票率との相関では逆のようである。
なお、議席を減らした原因は自民党のみならず民主党をも攻撃したことにある。
つまり、自分達こそ唯一の反石原勢力であるという主張が仇となったのである。
この唯我独尊的な態度が有権者の反感を買ったようである。
民主党への批判を慎み、自民党公明党への批判のみに絞り込めば、現有議席を守り、「確かな野党」としての地位も保てただろうと思えただけに、残念至極である。

(5)幸福実現党

今年5月に結党して初めての選挙となった幸福実現党であるが、候補者全員の得票数が何と15000票程度という惨憺たる結果に終わった
正直、ここまで酷いとは思ってもみなかった。
特に、「幸福の科学」の本部のある品川区で供託物没収点以下という結果を出したのには唖然とした。
この件について、幸福実現党このようなプレスリリースを出している。
都議選結果に対する敗者の弁を要約すると、

  • 公示ギリギリに候補者を出したりしたので時間不足だった。
  • マスコミが自分達を取り上げてくれなかった。

ということである。
1つ目に関しては、確かに、結党当初、総選挙と並んで1大選挙イベントとなる都議会議員選挙への出馬をする気色が無く、その後の方針転換で急に都議選に出るという形になったのであるから、ある意味当然のことであろう。
しかし、民主党の候補者の中にもそのような人はおり、目黒区の富川知子女史は落選したとはいえ、16058票を得ており、共産党の沢井正代女史*5よりも多く得票しているし、葛飾区の佐藤由美女史に至っては当選を果たしている。
彼女らは民主党の看板があったお陰で善戦できたと言える面もあるが、ギリギリで立候補したことは必ずしもマイナスになったとは言えない。
幸福実現党の母体は宗教法人「幸福の科学」という創価学会に並んで有名な宗教団体であるから、知名度としては不足はないし、党のマニフェストだってきちんと整備されていたのだから、政策がよく分からないと言うことは言えないはずである。
また、2つめに関しては、そもそも都議会議員選挙自体、首都東京で行われる選挙とはいえ、一地方選挙ということに変わりはなく、マスコミが大々的に煽るようなものと言えるものではない。
ただし、今回の都議会議員選挙は総選挙の行く末を占うものとして注目を集めており、在京メディアは結構煽っていた。
既存の議席もなく、また立候補者数も42選挙区220人中、10選挙区10人に留まっているのなら、やはり、諸派として扱われても仕方ないのではないか。
また、政策面においても、以前書いたように、石原慎太郎都知事の第1期マニフェストの焼き直しに大胆不敵というか大言壮語したような国土開発計画のようなものを付け足したようなものでは、自民党民主党との対決が注目される中において、完全に埋没してしまっている。
しかも、ここ最近の政権交代に期待する世論からすると、幸福実現党の都議選マニフェスト自民党公明党に近い―所謂「石原与党」であると印象づけ、仮にマスコミに注目されたとしても、有権者の反応は冷ややかになることは想像に難くない。
以上を踏まえると、幸福実現党の敗因は前述の公式見解に加え、

ということである。
因みに、今回の都議会議員選挙での最低得票数は武蔵野市幸福実現党の甘利真次氏の396票であるが、2番目に低い得票数の候補者は幸福実現党とは別の諸派の候補者である西多摩の角田豊治氏の688票である*6
選挙速報の番組中、幸福実現党もこの角田豊治氏も共に諸派として扱われており、極端に得票数が少ないので、一瞬、角田豊治氏も幸福実現党の候補者かと思ったが、全く無関係な「大統領会」という謎の組織の出自である。
因みに、角田豊治氏の名前の読みは「だいとうりょう」と読むようである*7
田豊治氏は、2ちゃんねるにおいて幸福実現党又吉光雄氏などに比べると話題に上るような人物ではないため、私は今日初めて知ったのである。
なお、角田豊治氏のマニフェストはググっても本人のサイトが不明だが、「つのだとよはる」と読ませるべき名前をわざわざ「だいとうりょう」と読ませたり、「大統領会」という組織名称から察するに、「大統領制による『機動的で責任ある政治』」を旨とすることは想像に難くない。

3.所感

私は東京都における自民党勢力がマスコミで言われている程弱くないと考えるため、都議会議員選挙で勢力が入れ替わるような状態は起こりにくく、どの選挙区でも現職の議席は固いと見ていたが、蓋を開けてみたらびっくり、民主党が多くの選挙区で当選していた。
特に、1人区では島部以外の全ての選挙区で民主党候補者が勝っており、この調子でいけば、総選挙後、民主党が政権を握ることになると思える。
ただ、議席数の上では、民主党が第1党になって躍進した形になっているが、本質的な所はベテラン議員が自民党に限らず、共産党からも落選しており*8政権交替と言うより世代交替と言うべき選挙のようであった。
実際、民主党の新人候補は、島部を除き、最年長が55歳の岡田真理子女史(中央区)で、それ以外は30代が矢鱈と多い。
このことを考えると、東京において、来るべき総選挙では、民主党の候補者というより、「若い人」が勝つ傾向が出そうである。

*1:演:大沢逸美

*2:松下政経塾出身!

*3:内訳は伊藤悠氏が37430票、富川知子女史が16058票

*4:例えば、目黒区の場合は前回22749票→今回21531票、練馬区の場合は前回52776票→今回50011票

*5:12383票

*6:因みに、ワースト3位は新宿区の幸福実現党の櫛田幸輔氏の689票

*7:姓の「角田」が「だい」で、名の「豊治」が「とうりょう」と読むようである。
余談だが、嘗てとんねるずのバラエティ番組で「田中」と書いて「いしばし」と読ませる教師が登場したものがあった。

*8:練馬区の松村友昭氏