都議会幸福実現党のマニフェスト≒石原都知事のマニフェスト

2.始めに

もうとっくに都議選に向けて東京都内の各選挙区では選挙活動が本格化している。
それもそのはず、期限前投票は既に始まっているし、今度の日曜が投票日であるからである。
今回の都議選はさいたま市長選挙、千葉市長選挙、静岡県知事選挙に続く、今後の国政を占う上で重要な地方選挙と言われており、前回*1に比べて、非常に関心が高くなっている。
因みに、この前の日曜日の静岡県知事選挙では、民主党推薦の川勝平太氏が当選した。
民主党鳩山由紀夫代表の「故人献金」問題が噴出したり、対立候補民主党をこの県知事選のために離党した海野徹氏がいたりと、普通なら、不利な状況での戦いであるはずのなかでの当選なのだから、民主党に風が吹いているという状況である。
話が逸れてしまったが、当blogではここ最近、幸福実現党を取り上げていることもあり、都議選にも候補者を最終的に10人出してきた幸福実現党マニフェストについて取り上げる。

3.マニフェスト比較表

幸福実現党 石原慎太郎都知事(第1期) 民主党
1. 世界ナンバーワンの経済・金融・文化都市、東京を創ります。 (1 都が主導の債券市場にYES)  
(1)資金繰りに困っている企業を徹底支援し、潰しません。 1 都が主導の債券市場にYES  
(2)国際都市・東京を世界の経済・金融・文化センターにします。 (1 都が主導の債券市場にYES)  
(3)臨海部副都心を世界の金融・情報センターとします。 (1 都が主導の債券市場にYES)  
2. より早く!より快適に!交通革命を起こし、東京を活性化します。    
(1)未来都市・東京を「24時間都市」にし、雇用を創出します。    
(2)交通渋滞と満員電車を解消します。 (2 踏切のない東京にYES)  
(3)東京を中心とするリニア新幹線網を実現し、日本の各都市を東京と一体化します。    
3. より広く!より安く!世界一暮らしやすい都市・東京を実現します。 (8 住みやすい東京にYES)  
(1)規制緩和で、都心部に、広くて安い住宅を大量に供給します。 (8 住みやすい東京にYES)  
(2)外国人を受け入れ、待機児童問題、介護士不足を解消します。 (4 福祉に立ちはだかる規制にNO) (東京ペディア:介護施設など10万人を15万7000人分に増やします)
(3)都立病院の経営効率化で、医療負担を軽減します。 4 福祉に立ちはだかる規制にNO
(9 命が守れない危機管理にNO)
 
(4)都内から花粉症で苦しむ人をなくします。   (東京ペディア:多摩産材の活用を2倍以上に増やし、多摩の森林を再生させます)
4. 東京の公立学校を世界最高水準の学力にします。    
(1)ゆとり教育を全面転換!「塾にたよらない公立学校」を実現します。   伊藤悠:塾を必要としない公教育をつくる
(2)いじめ防止条例を制定し、安心して通える学校にします。    
(3)宗教教育を取り入れて、優れた人格を育てます。 10 新しい道徳教育にYES  
(4)才能を最大限に開花させる天才教育を目指します。    
5. より早く、より質の高い行政サービスを提供します。    
(1)公務員の安易な首切りはせず、行政のスピード化を図ります。 (5 借金漬けの財政にNO)  
(2)予算の単年度制を廃止します。   中谷祐二:予算編成の「しくみ」を変える。

※類似性の高いものを取り上げた。
 また、民主党の「東京ペディア」及び各候補者*2マニフェストも比較対象とした。
※括弧で囲まれているものは、いずれかに具体的な記述が未詳のために解釈上、類似となりうるものということである。
 これに関しては、低い類似性のものとしている。

4.比較表の解説

(1)「1. 世界ナンバーワンの経済・金融・文化都市、東京を創ります」について

ここは、石原慎太郎都知事の「1 都が主導の債券市場にYES」に極めて近いと思われる。
特に、主要争点である、新銀行東京の存続問題について、幸福実現党は「企業家を育てる知識・情報産業としての銀行モデルになるように経営をイノベーション」するとして、新銀行東京の存続にYESとしている。
また、2016年東京オリンピック招致についても「2016年の東京オリンピック招致を促進し、東京の国際化・経済発展に弾みをつけ」るとしており、東京オリンピック招致にYESとしている。
なお、東京オリンピック招致は石原慎太郎都知事第2期のマニフェストの内容である。

(2)「2. より早く!より快適に!交通革命を起こし、東京を活性化します」について

世界中をリニア新幹線でつなげるとかいうのは余所では聞かない話であるのだが、「(2)交通渋滞と満員電車を解消します。」の中で、「渋滞の激しい交差点・踏切についても、立体交差化を進めます。」という記述より、石原慎太郎都知事の「2 踏切のない東京にYES」と類似しているとした。
ただし、それは「交通革命」のごく一部であるため、完全に一致する事項ではない。

(3)「3. より広く!より安く!世界一暮らしやすい都市・東京を実現します」について

ここは全般ではなく、各項目毎に解説してみる。
まず、「(1)規制緩和で、都心部に、広くて安い住宅を大量に供給します。」についてであるが、石原慎太郎都知事の「8 住みやすい東京にYES」を1段階落とし込んで具体化したような感じである。
次に、「(2)外国人を受け入れ、待機児童問題、介護士不足を解消します。」についてであるが、「外国人を受け入れ」るかどうかを記述していないものの、外国人受け入れの規制を緩和乃至は排除するということを考えると、これもまた石原慎太郎都知事の「4 福祉に立ちはだかる規制にNO」を1段階落とし込んで具体化したような感じである。
一方、民主党では「東京ペディア」にて、「MSW(メディカルソーシャルワーカー)を育成・配置」するという対案があり、これも部分的に類似しているとした。
なお、民主党の場合、待機児童問題については一部の候補者において、保育所の増設をマニフェストに挙げている。
次に、「(3)都立病院の経営効率化で、医療負担を軽減します。」についてであるが、民間活力を導入するということに鑑み、石原慎太郎都知事の「4 福祉に立ちはだかる規制にNO」と類似とした。
厳密に異なる点が多いのも否めないが、民間活力の導入という点では際立った共通項であると思える。
また、24時間医療のことも考えると石原慎太郎都知事の「9 命が守れない危機管理にNO」にも共通点がある。
最後に、「(4)都内から花粉症で苦しむ人をなくします。」についてであるが、これは民主党「東京ペディア」の「多摩産材の活用を2倍以上に増やし、多摩の森林を再生させます」という所に共通点がある。
多摩地域の杉材の活用で花粉症を減らすというのは、幸福実現党の「大規模な間伐と枝打ち」をより建設的な形に言い換えたものと言える。

(4)「4. 東京の公立学校を世界最高水準の学力にします」について

これについては共通点のあるものに限定して解説する。
まず、「(1)ゆとり教育を全面転換!『塾にたよらない公立学校』を実現します。」であるが、これは目黒区の民主党都議伊藤悠氏も「塾を必要としない公教育をつくる」というマニフェストを掲げており、主張内容も家計への負担の問題の指摘や公立中学校に塾並みの進学指導を取り入れるべきという所で完全と言って良い程一致している。
幸福実現党民主党都議とが同じ主張というのは結構珍しい。
因みに、私も、この政策は支持している。
次に、「(3)宗教教育を取り入れて、優れた人格を育てます。」であるが、これは石原慎太郎都知事の「10 新しい道徳教育にYES」とほぼ同じと言える。
流石に、石原慎太郎都知事の方は「宗教」という言葉を全く用いていないが、「人が生きていく上で当然の心得」というのは「善悪の価値観や、愛と慈悲、セルフヘルプの精神」ということを抽象化して述べたものと言えるので、石原慎太郎都知事の言う「新しい道徳教育」とは、幸福実現党から言わせると「宗教教育」ということになるのだろう。
こちらは、前述の「塾にたよらない公立学校」とは違い、石原慎太郎都知事に近い。
なお、「(4)才能を最大限に開花させる天才教育を目指します。」について、練馬区民主党候補者浅野克彦氏などは「奨学金制度の充実」というようなことを主張しており、幸福実現党とは全く違ったアプローチでの「才能を最大限に開花させる天才教育」目指す対案を出しているが、幸福実現党の主張に奨学金のことは全く触れられていないので、これは類似性なしとした。

(5)「5. より早く、より質の高い行政サービスを提供します」について

まず、「(1)公務員の安易な首切りはせず、行政のスピード化を図ります。」についてであるが、石原慎太郎都知事の「5 借金漬けの財政にNO」に近い。
ただ、具体的に述べられている所とそうでない所がお互いにあるため、低い類似性として扱った。
共通性の高い所は「公務員の安易な首切りはせず(幸福実現党)」と「リストラだけに頼らず(石原慎太郎都知事)」ぐらいで、「経営の思想を取り入れ(幸福実現党)」と「都のバランスシートをつくって資産を証券化する(石原慎太郎都知事)」など、一般的な記述と具体例の記述の対比になってしまっている。
次に、「(2)予算の単年度制を廃止します。」についてであるが、練馬区民主党候補者中谷祐二氏「予算編成の「しくみ」を変える。」と類似している。
幸福実現党も中谷祐二氏も「一度決めたら予算は使い切る」という慣習をストップさせるという点では共通している。

5.所感

所々、民主党と類似した点も見られるが、やはり全体的に幸福実現党マニフェスト石原慎太郎都知事の第1期選挙公約に似ている
特に、前半部分はそっくりと言っても過言ではない。
ただし、後半は民主党の候補者や「東京ペディア」と類似する主張も多々見受けられた。
地方選挙では幸福実現党の支持層は必ずしも自民党支持層の一部ではなく、民主党も支持しうる*3と考えられたが、このマニフェストの考察からすると、都議選に限っては国政選挙同様、自民党支持層と幸福実現党の支持層は大いに重複すると言える。
特に主要争点について、築地市場の件に関しては言及がないものの、他の争点である、新銀行東京や2016年オリンピック招致について、石原慎太郎都知事(=都議会自民党)と同じ立場であることが判明したことからして、幸福実現党は「与党」の側にいると言える。

*1:2005年/平成17年

*2:ただし、私の守備範囲の目黒区及び練馬区に限定

*3:幸福実現党の総選挙の候補者である小鮒将人氏は元民主党所属の青梅市